歌の内容などわからぬ人々は、次々と銭を投げて彼をほめたたえている。

ディセルも輝く笑顔で拍手している。

スノーティアスの怒りを買ったという精霊…ディセルも、まさか…。

吟遊詩人が竪琴をしまいはじめたので、人々は彼に声をかけながら散らばっていった。

セレイアだけが険しい視線を向け、その場を動かない。

「そこのお兄さん」

吟遊詩人が不意に顔を上げ、ディセルに向けてそう声をかけた。

「え、俺?」

ディセルがとまどいながら自分を指差している。

セレイアはかばうようにディセルと吟遊詩人の間に立った。

「雪を、降らせてはもらえないか?」

「……!!」

その一言に、セレイアは凍り付いた。

なぜそれを知っている!?

「え…と、すまない。雪は、みんなの前では降らせないでほしいって言われているから―」

「…あなた、何者なの」

セレイアの鋭い質問など聞こえていないかのように、吟遊詩人は二人ににやにやとした微笑を向ける。何かをとても面白がっているような笑みだ。美しいが、何か底知れぬ、寒気がするようなものを感じる。