「なんで戦を仕掛けてなんてくるんだ?」

「それは…」

向けられた純粋な瞳に、セレイアは一瞬言葉に詰まった。

人はなぜ戦をするのか。

幼い頃より、セレイアはそのことを疑問に思い続けてきた。

けれど今に至っても、その明確な答えをみつけられずにいる…。

「ただ領土を広げたいのかもしれないし、豊かになりたいのかも知れないし、とにかく征服したいだけかもしれないし、儲けたいのかも知れないし…。理由はそれぞれの胸の内にあるわ。けれどきっと…人間っていう生物が、弱いから、なのよね…」

「そんなことない」

思わぬ断固とした口調の返事が返ってきて、セレイアは呆ける。

「え?」

「少なくともセレイアは、弱くなんかないと思うよ」

そう言うディセルの瞳はまっすぐすぎて、見ていて何か…胸が痛む気がした。

「…………」

セレイアは何も言わずに目を伏せ、ただ心の中でこうつぶやいていた。

―私は弱いのよ。本当に弱い人間なのよ、ディセル…。

「さて、と…私はこの本を読んでみるから、また何かわからないところがあったら言ってね」

強引に話題を変えたが、ディセルはちょっとだけ不思議そうにセレイアをみつめただけで、何も言わずにいてくれた。