「行ってらっしゃいませ、セレイア様、ディセル様」

「旅のご無事を祈っております」

二人の笑顔は、事情をすべて知っているとうかがわせた。セレイアが二人に話したのだろう。二人にだけは、真実を知っていてほしかったに違いない。

「フリムヴェーラ、クレメント…ありがとう」

ディセルはまだセレイアを抱いたままであることも忘れて二人に微笑みを返す。

しばらくは大人しかったセレイアが腕の中で暴れはじめたので、ディセルは仕方なく彼女を解放した。

「さ、行きましょ! ぐずぐずしてたら置いてくわよ! じゃあまたね! フリム、クレメント。留守の間、神殿を…この国をお願い」

「承りました」

照れ隠しに大股に歩き出すセレイアの背中に、いつか想いを告げたいともう一度切なく思いながら…ディセルはその背を追って歩き出した。

束の間の、夢を見るために。

その先に待つ謎に、未だ気づかぬままに……。

これがディセルとセレイアの長い旅の、はじまりだった。