『あなたの両親は、幼い頃に行方不明になったということは、知っていますね』

唐突にそう切り出されて、セレイアは不審に思いつつも答えた。

『……はい』

『ほかに、何か知っていることはありますか』

『…いいえ、残念ながら。どんな人なのかも、何をしていた人なのかも、何もわかりません』

『……そうでしょうね。わたくしがそのように仕向けましたから』

『え!?』

耳を疑うとはこのことだった。

セレイアが今聞いたことが事実なのか理解できずにいると、ハルキュオネがたたみかけた。

『よくお聞きなさい、セレイア。私はあなたの両親を、知っています』

『えええ!?』

なんの心の準備もできていないセレイアに、ハルキュオネは語った。

『セレイア、あなたの父は名の知れた冒険家ランケスター。そしてあなたの母は、わたくしの前に姫巫女だった女性、セリーンです』

『――――………』

先代姫巫女セリーンが、自分の母。

突然そんなことを言われても、まったく実感が湧かなかった。

頭がついていかなかった。

セリーンといえば、霧を流すための風車を開発した女性ではなかったか。そんな情報がちらりと脳裏をよぎる。