二人は空腹を覚え、少し開けた場所をみつけて食事休憩をとることにした。

頭上に茂る葉のせいで陽の高さはわからない。

だが、歩き通した感覚からすれば、昼は過ぎているだろう。

ブールの村長たちが心づくしで持たせてくれた硬めのパンに、二人でかぶりつく。

セレイアより少し早く食べ終わったディセルは、しげしげと落ちている葉っぱを手にとって眺めた。

見れば見る程美しい、と思う。

力強い葉脈。つやつやの表面。

この葉っぱだけではない、世界はどこを見ても、細部に至るまで神秘的でどこまでも美しい。

プミラが「何か面白いことがあるの?」とでも言いたげにディセルが持っている葉っぱに鼻を寄せてくる。それがかわいくて、ディセルはプミラをそっと撫でた。

―知らず微笑んでいたようだ。

いつのまにかセレイアが食事をやめて、こちらを見ていた。

「ディセルは本当に動植物が好きなのね。いえ…世界が好きってかんじかな」

にっこりと笑ったセレイアの一言を、自分の中で吟味してみる。

―世界が好き。

「好き……うん、好きだよ」

ディセルは頭上を仰ぎ、躍動感あふれる木々の姿を見上げた。

木が好きだ。蔓もシダも、全部好きだ。

珍しい色の蝶々が飛んでいる。それも好きだと思った。

生命にあふれるこの世界。

すべてが美しく、愛おしい。

そして―

「この世界が…好きだ」

目の前にいる、セレイアも。