―そうだ。セレイアはヴァルクスが好きだ。

だから自分の出る幕などない。

そう思ったら、自然とセレイアの体をそっと、引き離していた。

「もちろんだよ。それにどうやら…霧の虫を倒すことは、俺にとっても重要らしい」

「え?」

「今少し…記憶が戻ったんだ、セレイア」

「ええ!? それはすごいじゃない!」

「あの吟遊詩人の言っていた新しい力って、この力のことかもしれない。わからないけど…霧の虫を倒して記憶を取り戻していくなら、強い助っ人がいるんだ。俺の方こそ、力を貸してくれないか」

ディセルの誘いに、セレイアは満面の笑みを返した。

「ええ!!」

久々の笑顔。

やっぱりセレイアは、笑っている方が素敵だ。

自分のためだけに向けられた今のその笑顔を、ディセルは大切な宝物として胸に刻みつけたのだった。