やわらかな体と、花のような香りに、めまいがする。

セレイアはそんな彼の内心など知らずに、ぎゅっとしがみついてきた。

「ありがとうディセル! よくわからないけど、精霊としての力を使ってくれたのね?
それで霧を虫に変えてくれたんでしょう?
すごいわ!
これで戦える…私でも、みんなを守ることができるんだわ!」

セレイアはどうやら感極まっているようだった。

ぬくもりと、至近距離で紡がれる澄んだ声にぼーっとなりかけたディセルに、次のセレイアの台詞が冷や水を浴びせた。

「私、私…ヴァルクスを愛してるわ。
今も、これからも、ずっと。
でも、悲しんでばかりじゃだめなんだわ。
ヴァルクスの愛した国を、人々を、私、守りたいんだもの。何よりも強くそう思うの。
守るために生きたいのよ!
だからその力を貸して! ディセル」