『いざという時…姫巫女として俺を、殺すことができるか』



信じられなかった。

そんな選択を迫られる時が来ることなど。

できない。

できるはずがないと、セレイアは言いたかった。

何が何でも、どんなになっても、生きていてほしかった。

そばにいてほしかった。

けれどそうすれば彼は無差別に人々を虐殺し続けてしまう。誰よりも民を想う彼にとってそれは死ぬより悲しいことなのだ。

―でも、約束したではないか。

約束、したではないか…!

「いやよ、できない!」

涙で目が曇って、ヴァルクスの顔がよく見えない。

もっと見ていたいのに。

いつまでだって見ていたいのに。

これからもたくさん、たくさん、見ていられる…。そのはずなのに。