初めて出会ったのは
私が日本に戻って来ていた頃の事
生まれの土地だとお父さんに言われたが
正直記憶に残ってないほど幼い頃の事だったので
再び日本に来た時は懐かしい感じもせず
むしろ少し怖かったかもしれない
お父さんに言って近くの公園で遊ぼうとした時など大変だった
金髪の外国人、日本語が分からない
そんな子供と遊ぼうとする子はその公園には居なく自然と避けられた
そりゃ普通に考えたらそうなってしまって仕方ないのだから何とも言えない
でもあくまでそれは一人を除いての話だった
「…どこから来たの?」
その声の主は子供の頃の私からすればとても大きなアスレチックの上からこちらを見下ろしていた男の子のものだった
私と正反対の日本人らしい真っ黒な髪の色をしており
丸っこい目からの視線が私に対して好奇心を抱いてるという事を伝えてるように感じた
当時の私はその子が何を言ってるのか分からなかった
日本語が伝わらない事を察したのか彼はそのアスレチックから降りてくると私の目の前に立った
「えーっと…君名前は?」
「……?」
折角話し掛けてくれてるにも関わらず全く言葉が通じない事に対し私は少しおどおどし始めてしまった
すると彼は少し考える素振りを見せるとふと何かを思いついた顔をした
「えっと…ねーむ?君の、ねーむ?」
「…!」
それが名前を聞いてると言う事を察した私は少しだけ驚きと喜びが混ざったような表情をした
そしておどおどしながら答えた
「アリス…マイネーム・イズ・アリス」
私は彼に伝わりやすくなるようにと区切りながら名前を伝えた
彼は何かを察した表情をしては同時に笑顔を向けてくれた
「アリスって言うんだ…!えっと…まいねーむいず、ゆうき!」
私は驚いた、彼は私の聞いたばかりの言葉を使って私に名前を伝えてきたのだ
その優しさがとても印象に残っている
「ゆーき…」
その名前は私にとっては初めて聞く回りには居ないような珍しい名前だった
そうして私はゆーきと知り合い
この公園で毎日のように会うようになっていった
ゆーきは初めはぎこちなかったが私に日本語を教えてくれた
物を使って、体で表現して
ゆっくり分りやすく、私の為に色んな方法を使って教えてくれた
次第に言葉とジェスチャーで何とか話せるようになっていった
公園にいた他の子達も次第に私に近寄ってきてくれた
初めはおどおどしてる女の子、それからいつも二人で遊んでた男の子二人組
色んな子達と次第に当たり前の様に
一緒に遊んで、一緒に笑って
友達になっていってた
すべてはゆーきのおかげだった
私は少しずつ、ゆーきに対して感謝の気持ちと一緒に好意を持ち始めていたのかもしれない
しかしお父さんの仕事の用事が済むとまた引越しが始まってしまっていた
皆とやっと仲良くなったのにと
ゆーきともっと友達になりたいと思ってたのにと
私は帰りたくないと、そう思ってたが言い出せなかった
その事を公園の皆に伝えた時、女の子は泣いてくれて男の子二人は何もできないことに少し悔しそうにしていた
その時のゆーきの表情はよく覚えていた
少し寂しそうな様子でありつつも出来るだけ表に出さぬようにと隠した作り笑い
何となく心の奥で何かが刺さっていた
そんな複雑な気分を残しながら私は日本を飛ぶ日を迎えていった
でも日本を出る日の前、突然ゆーきが家を訪ねてきた
住所は教えてなかったが近所の人に外国人の女の子を知らないかと聞いて回ってらしい
玄関口でゆーきは私にペンダントをくれた
とても可愛らしいハートが天辺に付いている十字架のペンダント
彼は思い出にとそれを私にくれた
私は涙が止まらなくなってしまった
ゆーきと離れたくない、この日本にまだ居たい
そんな気持ちで一杯だった
焦りながらゆーきが慰めてくれるのを察した私は
ゆーきに対して日本語で伝えた
彼が初め辺りに教えてくれた日本語で
「ありがとう…」と
それだけ伝えると私はゆーきに…