『那津子、市場に行ってくるから店番。』
母が藁作りの袋に芋をはち切れるくらいに詰めた。
それを那津子は見ている。
 
美女神社の近くに映えていた丸太の木を切っていただけの、湿った古い丸太に腰掛けて、頬とついた。

売れない酒を眺めて、何もしない。そんな夕方。

それでも客は来た。もちろん、那津子を見物するだけだ。
酒も買わずに那津子を口説いて後を去る。
下品な男しか来ない那津子は、自分が嫁に行ける日を待っている。

百姓なんかまっぴらだった。

今日生きるのに精一杯なのはもうまっぴらだった。

まっぴらがありすぎて、呆れてものもいえない。