ある山国の北。丹二山の名を持つ山があった。
春になれば華が咲き誇り、夏は緑で染まる。
秋は鳩羽色の紅葉に染まり、冬は美しい雪化粧をする。
その変化があまりりも美しく、地元の山々を彩っていた。
 そこに代々伝わる物語は、姫君と農民の駆け落ち物語。
その最後の地を、この山が祀っていたのだ。
その姫君が絶世の美女だったそうで、そこは美人神社と名付けられ、観光客で毎年溢れかえっている。
観光客は決まっている。

女だ。

美しくなりたい。
愛されたい。
あの女に勝ちたい。
 世間が、憎悪が、嫉妬が、何千年と女をかき乱してきた。
それを女たちは美と志す。
そうして世は構成されてきたのだ。