「……ね、……やね、…………綾音!!」

気がついたら、薫は自分のと私の鞄を持って戻ってきていた

「ごめん」

「お前大丈夫かよ、ボーッとして」

さっきまで考えごとをしていた私を心配している

「ごめん」

薫を心配させないように、いつものように笑った

「…お前さぁ」

はぁーっと大きなため息をしている

どうしたのだろう、こんな私に愛想を尽かしたのだろうか

「俺の前では無理に笑うなよ
あと、いちいち『ごめん』とか言うな
謝る必要ないから
『ごめん』じゃなくて『ありがとう』って言ってほしいんだけど」

髪をクシャっとしながら薫は言った

そんなこと言われたことなかった

確かにいつも謝っていたかもしれない

無理に笑っていたかもしれない

「…一応彼氏なんだし」

顔を赤くして薫は言った

「そのまんまのお前を受け止めるつもり」

あぁ、私無理しなくていいんだ

謝んなくていいんだ

ねぇ、薫

「…あんた、どこまで優しいのよ」

止んだはずの涙が止まらなかった