オフィスに取り残された形になった俺は、思わず溜息をついた。

…聖が勘違いするのも無理はない。
とはいえ、人の、特に女の涙に弱い俺は、ああする以外思いつかなかった。

梓が好きなのは、聖だ。
今の誤解が解けることを祈るしかない。

…しばらくして、梓がオフィスに帰って来た。

「…安藤は?」
「…帰りました…たぶん、美雨の所かも」
そう言って、力無く笑った。

…なぜ、美雨の所に行った?
すぐに、その疑問が浮かぶ。

「美雨も、私と保田さんの事を、勘違いしてるみたいで…だから、安藤さんはあんなに怒ってたみたいです」

梓の言葉に、目を見開く。

「…保田さん。取り返しがつかなくなる前に、誤解は解いた方がいいですよ」

「…お前の誤解は?」
「…ちゃんと解けましたよ」

「そうか、それなら良かった。
…俺も誤解はとかないとな」

そう言って、美雨の家に向かった。