…流されてしまった気がする。
…いや、絶対にその場の空気に流された。

私は保田さんが好きだから。だから告白した。
日を追うごとに好きの気持ちが大きくなる。

でも保田さんは、私を好きじゃない。
嫌いじゃないとは言ったけど、それは私が同じ部署の後輩だから。

…とろけるようなキスをした保田さん。
私を好きになる努力をすると言ってくれた保田さん。

・・・でも、努力して人を好きになるものなんだろうか?

努力しないといけないのなら、それは決して本当の好きじゃない。

そんなのイヤ。
保田さんにも、心から好きだと言ってもらいたい。

「美雨、何ボーっとしてるの?仕事は終わったの?」
そう言って声をかけてきたのは、梓。


「え、あ、うん、今日は珍しく雑用は頼まれなかったし、自分の仕事も失敗しなかったから」
そう言って微笑む。


「失敗しなかったのは、焦る必要がなかったからよ。
美雨は、元々仕事は得意な方だと思うのよ。

先輩たちの無理難題にすべて応えようとするから無理をして失敗するの。
だからもっと、自分に余裕が出るように、先輩たちの雑用は、程々にしなさいね」

そう言って優しい笑みを浮かべた梓。
梓は本当に、頼れる優しい友人だと思う。

いつも私を助けて、助言して、まるで梓が私を守ってくれるみたいで。

「梓、私の彼氏になって」
「バカ、何言ってんのよ。私は、お・ん・な!よ!
彼氏なんてごめんだわ…親友なら大歓迎だけど?」

そう言っておどける梓。

「もう、梓、可愛い!愛してる」
「もう、何言ってるんだか」

ずっとずっと、私の親友でいてね。