お月様の友達


 夜空に輝くお月様。
 みんなの足元を照らす優しいお月様。
 



 ある夜、お月様はいつもと同じように顔を出した。
 「さあ、仕事が始まるぞ。今夜もみんなが転ばないように地面を明るく照らそう。」
 そこに、きらきらと流れ星が飛んできました。
 「こんばんは、お月様。今夜もお仕事がんばってくださいね。」流れ星は言いました。
 「ありがとう、流れ星さん。これからどこへ行くんですか?」
 「ちょっと木星の方まで出かけてきます。僕の友達がその近くに住んでいて、夕食に誘われたんですよ。」流れ星は答えました。
 「うらやましいな。気をつけていってらっしゃい。」
 お月様が言うと、流れ星は飛び去っていきました。
 「流れ星さんはいいなあ。私もどこか遠くへ行ってみたい。食事にも誘われてみたいな。」


 次の夜、流れ星さんが帰ってきて言いました。
 「ああ、楽しかった。あまりにも楽しくてついつい時間を忘れてしまいました。朝には帰ってくるつもりだったんですけどね。」
 「それはよかった。ところで、流れ星さん、一つ質問していいですか?」お月様は言いました。そして、流れ星さんがうなずくと話を続けます。
 「私は今までに一度も夕食に誘われたことがありません。どうやったら誘ってもらえるんでしょうね。」
 「そんなことを聞かれても、答えられませんよ。食事に誘うことなんて友達同士では普通のことですから。」流れ星さんはそう言うと飛んでいってしまいました。
 「友達同士では普通のこと…。」お月様はつぶやきました。
 「でも、私には友達がいない。これじゃあ、誰からも夕食に誘ってもらえないな。」

 お月様が悲しそうにしているのを見て、ずっと遠くにいる太陽が話し掛けてきました。
 「おーい、お月様!もっとみんなの足元を照らしてあげてくださいよ。ほら、仕事がえりの旦那が、足元が暗いからって転んじゃったよ。めそめそしてないでしっかり仕事しなきゃ。」
 「そんなこと言ったって、私は友達がいないからさびしいんですよ。仕事どころじゃありません。」お月様が言いました。
 「私は毎晩毎晩一人で輝いて、朝になったらあなたと交代。ここから自由に動くこともできません。」
 「だったら、僕とお友達になりましょうよ。」太陽が優しく言いました。
 「僕だって昼の間一人で一生懸命光を作っていなきゃいけない。とてもさびしいんだ。僕たちは遠く離れているから一緒に食事はできないけど、お友達にはなれるよ。」

こうして、お月様と太陽は世界で一番仲のいい友達になりました。


                             おわり