「お疲れ様。」

「あ、ありがとうございます。」

淡白に言われる一言。俺は今、複雑な気持ちだった。

葵はカケルと別れただろう。そうすれば俺に振り向く可能性も高くなる。

ただ…。葵の気持ちは?大好きだった人に浮気されて、精神ズタズタなのに、急に俺の事好きになって下さい。っていうのも可笑しい。

そんなことを考えていたのを察知したのか、咲良さんがこんなことを言い出した。

「遠慮してたらいつまでも片想いだよ?失恋を癒すのは、新しい恋って言うし。」

「そーなんすかねー……。でも、今は告白する時期じゃないと思うんで!考えて告白します。」

と返事すると咲良さんはふーん。とだけ言い、俺に缶珈琲を差し出した。

どうして良いのかわからずにもらってアタフタしていると、お礼。と言う一言ことだけ言って黙ってしまった。

さすが准の彼女。掴み所のない女の子だ。

しばらく缶珈琲を味わっていると、咲良さんから紙袋が渡された。

中身を見ると、ついさっきまで着ていた本当の制服だった。

「今日は…。本当にありがと。じゃあね。」

俺の返事を待たずに走って帰ってしまった。

俺も着替えて帰るか。そう思い、1回伸びをして立ち上がった瞬間ケータイが振動した。

「チッ…。誰からだよ…。」

ケータイのディスプレイには、『葵』と言う文字。

急いでメールを開けると中身はたった4文字。

Re:

フラれた。

今日のことを言っているのだろう。俺は着替えることなんか忘れてとある場所へと向かった。