キミと0センチ。

「ちい、どこから回る?」
「え!あ、えーと。そうだなぁ…」

完全に不意打ちだ。

「あ、私ー…

「「りんご飴!」」

あっ君が私の声とかぶせて全く同じ物を声にした。

なぜわかったのだろうか。
「やっぱり、ちい昔祭り一緒に行った時いっつも最初にりんご飴買いたがってたもんな」

とあっ君はしみじみと語り出す。

…覚えてくれてたんだ。

そうなのだ。私は昔から最初に買いに行くのは決まってりんご飴だった。

そんな、小さなことでも覚えてくれてたことに感激しながら私たちはりんご飴を買いに行くことにした。

屋台に並ぶりんご飴はライトに当たりキラキラと照り返し、艶やかな赤が店頭を彩る。

「うわぁ!綺麗!美味しそう〜!」
りんご飴を前にはしゃぐ私は子供そのものだ。
「はいはい、わかったから。おじさん、りんご飴一つ」

「あれ?あっ君もりんご飴食べるの?」
甘いものが苦手とは言わないが自分から買うことはしないあっ君が、珍しいこともあるものだ。
(昔は一人でりんご飴全部食べれなくてあっ君に食べてもらったこともあるが)


「や、俺のじゃなくて。はい。」


あっ君はもらった鮮やかな赤いりんご飴を私に差し出す。

「え!そんなの悪いよ!」

あっ君に買ってもらえるのはカレカノのそれのようでとても嬉しいが、
残念なことにそういう関係ではない私たちにとってそれは
申し訳なさの他にない。

「返されたって俺は食べれないし、勿体無いから食べてくれると助かるんだけど?」

こう言われてしまうと受け取るしかない。

甘い誘惑とあっ君の優しさにも負け、りんご飴を受け取った。

「…ありがとう!あっ君」

嬉しさのあまり笑みが溢れる。