分かってる。ちいがいつまでも俺のそばに居るわけじゃないって。

ちいとはお隣さんでお母さん同士で昔からの交流があったらしい。

生まれる前からの付き合いのちいは小さい時からあっ君あっ君と俺の側を離れなかったし、俺も妹が出来たみたいで
それはそれは可愛がったし、本当の兄妹のようだった。


でも、いつからだろう。

彼女を、妹とかじゃなくて 一人の女の子として見るようになったのは。

人より地毛が茶色くて、ふわふわしてる。まるでちいの中身を表してるみたいで、彼女になったよく似合う。

大きな目のキラキラした目とか、小柄な体とか、小さくてぷっくりした唇とか、
全部が愛おしいと思った。


ちいの全てが好きだ。

けれどいつも出る言葉は違うことばかり。


「…幼なじみだしって言葉に頼ってんじ
ゃないわよ」

ちいの親友にはお見通しらしい。

ちいの相談役が彼女になったように俺もちいの恋心は雪村にしか打ち明けていない。

まったく、面倒見のいい彼女はいつも痛いところをついてくれる。
(ちいが頼るだけあるよな〜…)

でも、


「ちいと俺との距離はこれくらいがいいんだよ。」

下手に壁を越えるよりは今のままの方がずっといい。
思いを告げて何になると言うのだ。
十何年ちいの兄役をやってきて、

今更思いを口にしたところで「兄妹としか見れない」
と言われるのは目に見えている。