side明希

俺に教科書を押し付け廊下に飛び出したちいを追うことはなく俺はただ彼女の走り去る後ろ姿を見つめるだけだった。

「?ちい、どうかしたの?」

朝から顔色が悪かったりしたし、やっぱり体調が良くないのかもしれない。

もしくは…


「…お前、ちいになんか言った?」

目の前の自分の席に座る、ちいの親友の
雪村紗栄子に視線を落とす。


彼女は気づいたらちいと親友なるものになっていて、どうやらちいの大事な相談役は俺から彼女になってしまったらしい。

「はあ?私はなーんも行ってないわよ。
あんたのせいでしょ?」

ハァ、とため息一つ零して面倒だと言いたげな口調だ。

俺のせいって、俺はさっき来たばっかりだし。


「…。俺、何も言ってねーし」