するとぺたぺたとスリッパを引きずる音が次第に近づいてくるのが聞こえた。


その人は、無言で私が横たわる、ベンチの隅に小さく腰かけた。


その人が座っても状況が変わらないまま時間は、容赦なく過ぎていった。



「煌………」



そんな中、突然その人は喋り始めた。


その聞き覚えのある声は、紛れもないお母さんの声だった。



「あんた、このままでいいの?」



言われた意味がよく分からないまま、私は、ゆっくりと顔を上げた。


非常口を印す、緑色のランプが、お母さんを不気味に映し出していた。



「さっきさっちゃんに聞いたの。もう…優くんは助からない………確実にね。それに…………」



お母さんは、言葉を詰まらせた。