「…ごめん優………優……!!」



私は、握り締めた拳に叫んだ。


事故以来触れてない、優に触れた最後の感覚を覚えている右手に。


嗚咽を盛らしながら、必死に声を殺して、泣いた。


悲しいんぢゃない。


苦しいんぢゃない。



悔しいんだよ……



確かに、悲しいし、苦しい。


でも、気付いちゃったんだ。


それ以上に悔しいよ……



私のこれからの世界に貴男の色が付かなくなること、そして……今まで貴男が付けてきた色が薄れていくこと。


それが何より、悔しかった……。



しばらくそのままでいた。


ここだけ時計の針が止まったように空気も音も私さえも、景色に溶け込んで分からなくなる、そんな、不思議な気分だった。