《私は、どうして走ったの?》
《何故ここまできたの?》
自分に問うても分からないこと、ばかりだった。
何より、胸の奥がきつくて痛い。
急激に走ったから、とかではなくてきっと悲しみが胸を絞めてたんだろう。
「うぅ………」
黒い皮張りっぽい独特の椅子に、私の涙が零れていった。
伝っては落ち、零れては染みていった。
「ごめ……ごめんなさい……。」
私は、きつく握り締めた拳を顔の横に置いて、もう片手で大事そうに撫でてみた。
きっと、もう少ししたら、優にはこの感覚がなくなるんだろうと感じながら。
触れても体温が感じれなくなるんだと、感じながら。


