私は、右も左も分からなくなってふらふらになるまで走り続けて行き着いたのは、誰もこなそうな冷ややかな廊下のベンチだった。


がくがくになった膝に手を当てて息を付いた。


さっきまで冷たいくらい寒かった体の中から暑さと汗が吹き上がるように湧いて出た。


怪我している場所が所々痛んで、上半身だけ横たわるようにベンチに腰かけた。


荒々しく一定のテンポで吐き出していた息が次第に整い、体の暑さも弱まっていった。



『伊佐木さーんっ!』



廊下の奥に反響して私を探している声と騒がしいナースシューズの足音がした。


きっと、看護婦さんたちは、私が幼なじみの死を目のあたりにして狂ったと思っているんだろう。


本当にその通りのようなものだった。


はっきり言って、私がここまでなんで走ってきたのか分からないし、どうして走りだしたかも、分からない。