看護婦さんは、心苦しそうに一旦目を閉じ、心を落ち着けると、覚悟を決めたように口を開いた。


その瞳には涙が滲んでいた。



「田所健志さんはRh‐ではありません。そして、うちにある血液のパックは一パック、この状態のまま手術を停止しておくのは不可能ですし、血液が届くには時間がありません。」



看護婦さんは、涙を零した。


そして、幸さんに無念そうに言った。



「手術前に…話はあったんです。もしも、最悪の場合片方しか助からないならどっちだ、と。意識があったのは優さんで彼はためらいもせずに『秀を助けてくれ』と……」


「…どーしてっ、早く言わないのよ!!」



幸さんは、声を振り絞るように、怒鳴った。



「でも、手術する範囲は優さんのほうが広く血をたくさん使います。それに比べただ今昏睡状態の秀さんのほうが助かる確立が高いんです。」



どうか、分かってください。と、看護婦さんは、付け足して顔を伏せた。