こんな時間に来客とは考えがたいし、誰かが帰宅してきたとも思えない。
そういえば、最後に私が帰ってから鍵閉めたっけ?!と、葛藤を繰り返しながら玄関先まで飛び出した。
「誰っ?!!」
「…うるさい!弟が帰ってきたのも分かんねーの?」
そこには、鼻の頭を赤く染めた穹が立っていた。
私は、ぽかんと口を開いて穹を見つめた。
「なんだ、穹ぢゃん。びっくりさせんなよ。」
私より一足遅く玄関に出てきた秀は、それだけ言って居間に戻った。
私は、いつも以上にピリピリしたオーラを持つ穹に若干困惑しながらただただ立っていた。
一方の穹は、誰にも関わってほしくないという空気を身にまといながら、
私なんていないかのごとく、さっさと2階に上がってしまった。


