やっぱり、言うんぢゃなかった……。
《4月5日・早春。》
『…は?!淘、化粧してんの?!!』
入学式の朝。
私が見る目線の先にいる淘は、素知らぬ顔で違う顔を創っていく。
アイラインを入れながら、私を横目で見て。
『煌は、素顔が売りだけど淘は、創んなきゃ……』
少し皮肉っぽく言いながらマスカラを付けていく。
鏡の中の別人な淘に向き合いながら。
『創んなきゃ、何?』
『何でもないから!!』
あまりに台詞選びに悩んでいたから、つい口を出したら逆ギレ。
薄くのせたファンデーションの下から浮かび上がるように自然な桜色が頬を染め綺麗に淘を飾る。


