「…もうちょっとだ。」



私がそうつぶやくと、秀は、潮風に顔をしかめながらも頷いて、私の手をさっきよりも強く握り締めた。


この坂道の延長に続く、崖があって、その崖の手前にカーブがある。


嫌な思い出しか、出てこない。


カーブまで降りたところで足を止めた。


カーブの曲がり角に枯れた花束が風に揺られ、近くにはお菓子の箱の残骸や汚れた缶ビールが横たわる。


そこで事故にあった人の、お供え物。


私は、秀の手を引くようにそれに近寄った。



「お父さん……お久しぶり。」



私の目から自然と涙が流れた。