「うっ、わ!!」
「あ、秀!!」
風呂場に駆け込むと、洗い用のデッキでつっかい棒をした。
扉の向こうで稔ちゃんがみんなを起こさない程度に叫んでる。
お風呂場の時計は、もうとっくに12時を過ぎていた。
『お楽しみはまた今度♪
姉貴にバレちまったし。
今日は帰るわ。
海、楽しみにしてろよ。』
秀が水滴のついた鏡にきゅきゅ、と音をたてて《声》を書いた。
にこ、と笑って私を見て、優しくキスをして、またね、と手を振った。
頭をぽんぽん、と撫でてデッキをとって外に出た。
稔ちゃんの怒った声と扉の閉まる音を聞いた。


