私は、沈み込んだ気持ちを体ごと押し上げた。
駅に着くアナウンスが流れて隣に置いていた鞄を膝に乗せる。
目を閉じて、いつの間にか流れていた涙を流すだけ流して到着2分前に拭って席を立つ。
手動の扉を開けると、白い息と共に雪が落ちてくる。
殺風景なホームを突っ切り無表情な駅員に切符を押しつけて外に出ると、大きな雪の粒が頭に降りかかる。
涙のあとがひやりと寒かった。
「ただいま〜。」
ただでさえ、木造で軋む薄暗い中で静まり返る空気を突き破るように足を踏み入れた。
いつもよりも、静かで不思議な感覚だった。
そっと居間の扉を開くと、小さな箱を抱えたお母さんが仏壇の前でぼんやりと座っている。


