ダメだ、今度こそ。
今度こそ、離れちゃダメだ。
ダメだったのに………
病院に駆け込んで、階段を上る。
エレベーターなんて考えもしないまま、3階のフロアまで駆け上がると、看護婦さんが控えめに走っていく私に注意した。
そんな言葉に聞く耳を持たずに、勢い良く秀の病室に飛び込んだ。
「あれ………?」
呟くように言うと、跡を追ってきたさっきの看護婦さんが息を切らしながら言う。
「やっぱり……伊佐木さん、院内は、走っちゃダメって前も言ったぢゃないですか。……伊佐木さん?」
「秀は………?秀は……どこにいますか?!」
私がすがるように言うと、私よりも小さな看護婦さんは、驚くように身を仰け反らせた。
「梅澤さん……?さっき、屋上のほうに行くのを見たけど………」
そう言った看護婦さんを押し退けて廊下を走りだした。


