髪の毛をむしるかのように掴んで悔しそうに唇を噛んだ。


頬を涙が落ちていった。



「最初は慣れないでしょうが、筆談とかいろいろ考えてみてください。治療法が見つかるかもしれないし……諦めたらそこで終わりですから。」



医者は、それだけ言って病室をあとにした。


秀は、悔しそうに横たわるだけだった。



「秀………?」



私が呼んでも、反応がない。



「りんご、稔ちゃんが剥いてくれたの。食べない?」



また、反応がない。


私は、諦めきれなくて身振り手振りでも、会話がしたくてりんごを持ったまま、喋り続けた。