一番始めに、一緒に行く!と言い出しそうなくらい秀に懐いてた穹は、泣き腫らした目を伏せて眠っていた。



「煌。」



声の方向に振り向くと、心兄が運転席の窓から私を呼んでいる。


優しいせいなのか、すごく心配性だなぁ、と思いながら降りたばかりの車に近寄ると、微笑んでいた。



「秀のこと…分かってやれるのはもう、お前だけなんだから。突き放されても……離すなよ。」


「…………うん。」



自然と言葉が出て、心兄につられて笑った。


心兄は、嬉しそうにもう一度笑って、窓から寒そうに片手をあげながら遠退いく。


どんよりと被さっていた雲の切れ間から一縷の光が私の方へ零れていた。



病院の中は、平日の午後とは言え、冬休みだからか思ったより人がいた。


ナースステーションには寄らないで、真直ぐに秀の病室を目指した。