でも、反応はまったくと言っていいほどない。



「このまま…一旦煌を秀の見舞いに置いてくるからちょっと遠回りになるけどいい?それとも、先に家寄ろうか…?」



お母さんは、何も言わない。


ただ、黙って箱を抱えたまま外を見てる…それだけ。



「ぢゃ、病院行くからね。」



反応のないお母さんに心兄は、ハンドルに力を込めてアクセルを踏んだ。


後ろ方向に引っ張られながら私は考えていた。


今かかっている重力に身を任せたら、悲しみや辛さや苦しさをまとめて全部、どこかへ飛ばしてくれないか………と。



「煌、ついたぞ。」



気付くと、心兄が運転席から身を乗り出して私を呼んでいた。


自分でどこを見てるか分からない焦点を必死に心兄に合わせて、消えそうな声でお礼を言って車から降りた。