近くて遠い。


あれから数日が経った。


あの後、2人には

《今日はありがとう。楽しかったです》

とメールを送ったきり関わりはない。


まあ、涍については美久からよく聞くけど。


でも。


最近、凄く美久の男好きが目立っているように見える。


学年のかっこいいと言われる男子にはすぐ声をかけ、周りから見れば【いちゃっている】。


ほら、今だって。


「今日ね、柳田がね!____」


他の男の話ばかり。


口を開けば男、男。


まあ、涍の話も出てくるが、涍については悪口というか、嫌味というか。


最初の頃は照れ隠しかなとか思ってたけど、最近では少しいきすぎているように感じる。


「...ねえ。」


「んー?どしたの?」


「美久って、ほんとに涍のこと好きなの?」


美久の口から好きという言葉が聞きたくて聞いてみた。

が。


「さあ?」


「またそればっか。いい加減素直になった方がいいと思うよ?」


「はいはい。大丈夫だって。それより木田がね______ 」


やはり無理だった。


こういう会話も何回目だろう。


「ちょっとトイレ行ってくるね」


「あ、うん、いってらっしゃーい」


少し、疲れてしまった。


「はあ...」


「あ。」


ばったり、藤咲 涍と目があった。


「久しぶりだね。」


私は精一杯の作り笑顔で言った。


「うん。なんかあったの?元気なさそうに見えるけど」


作り笑顔がばれていたようだ。


「あー。別にたいしたことないよ。そっちは?」


「ん...俺は...」


涍は言いかけると同時に俯いてしまった。


「え、そっちこそなんかあったの?」


苦笑いを浮かべながら、気まずそうに

「最近、美久が冷たいというか。なんというか...


廊下とかで見つけても男と居るし。まあ、やきもちかな...かっこわるいだろ?」


「.... 」


「ははっ、そこは笑うとこだろ?」


そう言った涍の笑顔は、どこか影のあるものだった。



「...美久は、ちゃんと涍のこと好きだよ。照れてるだけだから、わかってあげてね」


「ああ。...なんかありがとうな。ちょっと元気でたよ」


「ううん、全然」



こいつは、涍は、ほんとに美久が好きなんだ。


なのに美久は、どうして素直にならないんだろう。


凄くもどかしい。



キーンコーンカーンコーン



「あ、予鈴なったから行くね。んじゃ」


「おう。あ、またメールしてもいいか?その...相談とか...」


不安そうな顔で聞いてきた。


「うん、私でよければ、いつでも聞くよ」


すると彼は、あのときみたいにはにかんで答えてくれた。


「さんきゅ。じゃ」


そう、言った彼の顔は、少し安心したようで、でもやっぱりその裏には影があるように見えた。