「ああ、涍、おかえり。」
「ただいま、父さん。ちょっと仕事場行ってくるわ」
「ああ。...おや、こんにちは」
やっと私の存在に気づいたらしいお父さんは涍に似たはにかんだような笑顔で挨拶してくれた。
「こ、こんにちは」
なぜか緊張して、噛んでしまった。
お恥ずかしい。
「さては涍、コレかー?」
ニヤニヤしながら小指を立てて聞くお父さん。
「ち、ちがいますちがいます!」
慌てて否定した。
が。
「へえー、ほんとかなー?」
そう言ってニヤニヤしたまま。
「残念ながらこいつは違うって。たまたまパンクしたみたいだから、直してやるんだよ」
「そうですそうです!」
さすがに息子がこれだけ落ち着いていれば納得するだろう!
「ほー... 」
ニヤニヤは無くなったが、今度は疑いの目を向けられ、どこか気まずい。
「ったく。ほら、行くぞ」
「あ、うん」
お父さんにペコッとお辞儀したあと、涍の後を追いかけた。