妹の言葉に、私たち家族は目を光らせる。

両親は私が生まれた際に名前に《海》の文字を入れた名前をつけてくれた。
そして海の波を立たせる役割である《風》の文字が入った名前を妹に付けた。
そしてそれから我が家にやってくる猫達にも、なぜかそういう自然に関する文字や名前を付けるのが、その頃の我が家では当たり前のことだった。

紙とペンを持ってきて考え出した名前会議。
この2匹はメス猫である事がわかっていたので女の子らしい名前で両親と妹は考える。
だけど、私はもうすでにこの2匹にふさわしい名前を思いついていたのだ。

「ヒナタちゃんと、ハルヒちゃん。」

そう言いながら私は紙に
《陽向》と《晴陽》と書き込む。

「なんで?」

自分が良い名前を考えたかったのか少し不満そうに妹は私に聞く。

「この子達は雨の中生き延びて晴れた今日見つかったのと、太陽のように真っ直ぐと明るくて暖かい子になって欲しい事。それから、目が見えるようになって太陽の光を感じられるように。」

母親が、なるほどね、と小さく言った。

「太陽の暖かい光がこの子達に向きますように。ってので陽向(ヒナタ)と晴れた日の真っ直ぐな太陽のように生き延びてくれますように。で晴陽(ハルヒ)。」

我ながらとてもいい名前だと感じていたしこれ以上の名前はないと思っていた。
父親も母親も、妹もその名前を聞いていいね、と言ってくれた。

「どっちが晴陽でどっちが陽向?」
「やっぱり、目が見えて欲しいからこっちの子が光を感じられるように陽向ちゃん。そっちの子は真っ直ぐ生きて欲しいから晴陽ちゃん。」

お父さんの抱く目が見えない恐れのある子を陽向ちゃん、そしてお母さんの抱く子を晴陽ちゃん。と、名前を呼びながら私は頭を撫でてあげる。

その時2匹が小さな声で
みゃー
と鳴いてくれたのは私にとっては『名前をありがとう』と言ってくれたようで嬉しかった。

そしてこれが陽向と晴陽が我が家へやってきた経緯になる。