雨の降る外には一人の綺麗な顔立ちの男が笑顔で立っていた。
黒髪で柔かな雰囲気の男はれんの頭を撫でた。
「おかえりっ、ぱぱ!」
れんは笑顔で男に飛びつく。
男は嬉しそうに笑みを浮かべる。
「みんなは?車にいるの?」
「れんっ!」
心配で追いかけてきた母が、れんの名を大声で呼ぶ。
「はなれて!」
母は驚いたように声をあげる。
そんな母の様子に驚いたれんは思わず男から離れる。
「え、けど…ぱぱ、だよ?」
れんが不安そうにそう言った瞬間、
ーザシュッ
見えない何かがれんの体を斬り裂いた。
「れんっ…!っ…何て事するの!?」
母は背中から血を流し、気を失うれんに駆け寄る。
そして男を睨み付けた。
「春…久しぶり」
男は笑顔で女性を見つめる。
「おかあさんっ、けいさつに電話したから…っ」
家の中からるりが泣きそうな顔で出てきた。
「まだいたんだね…君とあいつにそっくりな子ども達。けど大丈夫、子ども達は無事だからね」
「何を…言ってるの、彼と…会ったの?」
女性は唇を震わせる。
「会ったよ。とても睨まれたよ…久しぶりに会ったのに」
「早くっ、出て行って…!れんを傷つけたあなたを許さない!」
女性はれんを抱き締め、叫んだ。
そんな姿を見て、玄関口に立つるりは事の重大さに気づく。
血を流し倒れている妹と、今までに見た事のない表情の母…そして、
自分を見て目を細める男。
るりは生まれて初めて人間を怖いと思ったのだ。
