「まず第一にお前がすべき事は、力を制御する事だ」
まだ十代後半くらいの男が言った。
それに頷いたのは、いつもと同じ様に長い黒髪を三つ編みにしている瑠璃だ。
「水の能力は扱うのが難しい…だが、極めればやれる事は未知数だ。その分危険な事もあるがな…」
男は瑠璃にペットボトルに入った水を差し出した。
「水の能力者は周りに水が無くても水を生み出す事ができる…そして操る。先程まではかなり辛い訓練だったと思うが…基本、水の能力者と言うのは、外で使う能力としては最強だな」
「どうしてですか?」
瑠璃はペットボトルを受け取り、水を飲んだ。
「この空間では自分の魔力を水に変えて使うしか無かったが、外に行けば水はそこらにある。それを操れば良いだけだ。それは他の自然能力系の奴らも同じだが…この世に水は余るほどある。お前は良い能力を手に入れたな」
無表情にそう言う男は、瑠璃の担当で黒のストレートの髪で切れ長の目をした落ち着いた雰囲気の男だった。
特徴と言えば容姿が優れている事と、手に黒の手袋をはめている事だ。
「お前は五つ子だったな…なら瑠璃と呼ばせてもらうが、俺の事は好きに呼ぶと良い」
「では尚さん、と呼ばせてもらいますね。尚さんもここの関係者なんですか?」
尚、皇 尚(すめらぎ なお)と言う名前は訓練を始める前に聞いたものだ。
「いや…俺は学園の生徒だ。高等部2年で自然能力系クラスだ」
「そうなんですね。なら今日は学校があったんじゃ…」
瑠璃は申し訳無さそうに皇を見る。
「それなら問題は無い。理事長から許可は出ているし、俺が適任だと言われたからな」
皇は全く気にしていない様子で答える。
「ありがとうございます。なら頑張らないといけませんね」
「ああ、お前達が高等部に入るまでの半年間よろしく頼む」
皇は一瞬戸惑ったが、手袋をはめた手を差し出した。
瑠璃は嬉しそうに微笑むと、握手を交わした。
瑠璃はこれからの目標に向けて頑張る決意をしたのだった。
