ある一室では汗を流している藍と一人の若い女が向き合って立っていた。
真っ白な広い部屋で家具も無く、あるのはドアだけだ。
汗を拭った藍が来ているのはジャージで、女もジャージを着ていた。
「ここまででそれだけ出来たら上出来やと思うで?やっぱうちの教え方が上手いんかなあ?」
得意げに笑っている女は、ベリーショートの赤い髪に八重歯が特徴的で愛嬌があった。
「本当にありがとうございます、南さん」
「藍は素質があると思うわ!体力も中々あるし、物覚えも良えわ!植物の能力の子は学園でも珍しいから、うちが教えれるか心配やったんやけど…」
南と言う女の言う通り、藍の能力は植物…草、花、木などに関する能力だった。
「南さんはどんな能力なんですか?」
「ふふふっ!知りたい?うちの能力はなあ……うん、あんたが困った時に教えたる!」
「えっ、教えてくださいよ!」
「そんなんおもろないやん…まあ、うちの初めての弟子やからね、あんたを助ける時に見せるわ!」
南は笑ってそう言うが、藍は少し不服そうだった。
「ふわぁー…、あんたがやる気満々で夜明け前から起きてきたから、うち眠たいねん。まだ8時やからお昼まで寝るわ」
そう言って、藍にふらふらと手を振る。
「も、もう少し一人で訓練しても良いですか?」
「ええけど、無理せんよーにね」
南はそう言うと、部屋を出て行った。
藍は一人になり、一度だけ深呼吸をすると掌を開き上へ向けた。
気持ちを落ち着けてから、視線を掌に集中させるとぼんやりと明るい緑色の光が現れた。
それを見て藍は少し頬を緩めた。
その瞬間、光はシュンっと霧のように消えた。
「はあ…」
藍は倒れるように床に寝転がる。
しばらくして…かすかに寝息が聞こえて来た。
