真っ白な部屋で、紫苑は目を覚ました。


「ん…ここは」

自分の家の自分のベッドの上でもない場所に、普段あまり慌てない紫苑も少し焦る。


周りを見渡してすぐ、自分の兄妹の姿を見つける。

「瑠璃…」

隣のベッドの上には、瑠璃が眠っていて他のベッドにも兄妹が眠っていた。



紫苑は暫くボーッとしていた。




「やあ、おはよう。気分はどうだい?」

そう言って部屋に入って来たのは女だ。



白衣を身に纏い、色素の薄い長い髪を一つに結っていた。


「あなたは…?」

紫苑は警戒心を露わにする。

そんな紫苑に対して女は微笑む。

「私の名前は水戸だ。ここで働いている」

女は紫苑の居るベッドに近づき、名刺を差し出した。

紫苑はそれを受け取ると不思議そうに見る。

「国立ヒストリア魔法学園、魔法科学部…研究員?」

「聞き慣れない、と言った顔だね。それも仕方無いだろう」

水戸はクスクス笑って、周りを見渡した。

水戸の視線の先には紫苑の兄妹達が、白いベッドに眠っていた。


「確かに聞き慣れないけど…信じられない訳じゃないです」

紫苑は淡々と答える。

すると水戸はにこりと笑って、「そうだね」と呟くように言った。

「君は幼い頃からこの不思議な力の事を認識していた。力に目覚めたのは君が始めだったかな?」

「俺だけだと思ってた…皆にもあるって事?」


「ああ、君達兄妹は私達の様な人間の中でも珍しい部類に入る…だから狙われたんだよ」


「皆は、大丈夫なんですか?」

紫苑は真剣な面持ちで尋ねる。


「ああ、少し蓮君が怪我を負っているが…うちの医療班は優秀でね。他の子達も少し気を失っているだけだよ」

その言葉に紫苑はほっと息を吐く。

「起きて早々悪いけど、身体検査を受けてもらいたい」


「分かりました。ところで…此処はどこなんですか?」

紫苑はベッドから出て、立ち上がると尋ねた。

「先程渡した名刺の通り、ヒストリア学園の科学部の研究所だ」

その答えに紫苑は納得すると、水戸に着いて行き部屋から出た。