「ごちそうさま…」

「はーい。じゃあ行ってらっしゃい!」





手際よく食器を片付けて、スポンジ片手に見送る彼女。

人間ではないのに妙なところが人間ぽいことにフッと思わず笑みが溢れた。


座敷わらし自体の能力を全て把握したわけではないが、彼女は思ったものを直ぐに出すことが出来たはず。

現に、たまに見る煎餅やお茶がそうだ。

それなのに、彼女はオレが関わるものはほとんど彼女自身の手でやってみせた。


彼女が現れてから一度だけ、4日間の部活の合宿があり、わざわざ伝える必要もないと思ったオレは、彼女には伝えずに合宿に行った。

帰ってからも彼女は普通に接してくるから別に気にも止めてなかったが、冷蔵庫を開けたオレは見てしまったのだ。

ラップが掛けられたおかずを。


これだけじゃない。

オレが部活の後で先輩に連れまわされて遅くなったときも、彼女は一度として寝ていたことはなかった。

必ず明るい部屋でオレを出迎えてくれたのだ。


これが彼女の能力なのだろうし役目なのだからと、そうだと勝手に割り切っていた自分はなんて酷い奴だったんだろうか。


なんて…、今洗い物をする彼女の背中を見ていると、急にそんなことを思った。




「……」




彼女は疫病神だとか、オレにとってただのお節介な居候でしかないと思っていたけれど、それは間違いなのかもしれない。


彼女は実際、頑張っていた。

空回りすることはあっても。


それを頑なに拒否していたのは…。





「あ、あのさ…」

「ん? どうしたの?」

「今日…、に、肉じゃが作ってよ…」

「え…?」

「…あー、くそっ…。何でもないよ。じゃあ行ってくる…」




あの日、冷蔵庫にしまわれたままで手をつけられなかったおかず。

そのお詫びに、オレの質問は今だけは先延ばしにしておいてあげようか…。




おいしいごはん<了>





(あー、オレ何言ってんだか…)

(…りょーかい)




.