「よし…」
「準備出来たか? 美希」
「出来たよー」
荷物なんて殆ど無いに近かったから、こっちに来るときに着ていた服を着るだけで、準備は直ぐに終わった。
部屋の荷物は爺さん達の方で処分してくれるみたいだから、処分しやすいように段ボールに纏めた。
荷物は風呂敷1つに収まった。改めて考えてみると、私って必要最低限の物以外は全然買ってなかったんだなぁ…。向こうでは服とか化粧用品とか、とにかくお洒落のためには金は惜しまない!って感じだったから無駄なものが結構あった。
いや、そりゃまあ年頃なんだし此方に居るときも多少は気になってたけどさ…。
何故かバカみたいに目の回りを塗りたくったり、何分か置きに必ず手鏡でチェックしたりとかは無かった。
最初の方はお洒落に気を使う理由も無かったし(別れたから)、透の話を聞いた後はそんなことに金を使うのが馬鹿馬鹿しくなった。
それに何より、爺さんから借りたお金を返すために働いていたわけだから…。
「美希ちゃん、良かったね」
「うん…。これも爺さんや柚木達のお陰だよ。ありがとう」
すっかり愛着の湧いた部屋に別れを告げて。一応バイト先の店主にも挨拶をして、最後に爺さんと柚木たちに会いに行った。
帰る方法を見つけてくれた事と、今までお世話になった分も含めて2人にお礼を言う。
そして、今までコツコツ溜めてきたお金を、爺さんに渡した。
「?これは…?」
「まだ借りたお金には全然足りないけど、生活費とか部屋とか色々貸してくれたから…」
「じゃが、あれはお主に与えた物じゃぞ?」
「でも借りたものは返すのが礼儀じゃん?」
まぁ、全然足りないけどさ…。そう言った私に、爺さんは「ほほほ…」と笑みを溢した。
「此処に来た時からと言うと、お主は随分と成長したようじゃの」
「へ?そう?」
「うむ。顔付きが変わった」
顔付き?別に何ら変わりないとは思うんだけど…。もしかして太ったとか?
両手で顔を包む私に、爺さんはまた笑った。
和んだ空気が流れる中、それに終止符を打ったのは透の「そろそろ時間です」の言葉。
此処に来た時の服装、此処に来た時の場所、そして時間帯を同じにすることが帰れるための条件だった。
爺さんと柚木に最後のお礼の言葉を言って、後ろ髪引かれるような思いで部屋から出ていった。
「美希、元気での…」
扉が閉じる直前に爺さんの言葉が聞こえてきて、それに少しだけ目元が熱くなった。

