ワンコと私








「ほら、着いたよ」

「…ありがと」



あー、最悪。人前でワンワン泣いたのなんか何十年ぶりだろ…。

爺さんと透の前(しかも思わず抱き着いてしまった)で散々泣いた私は、漸く落ち着いた頃に透に家まで送って貰った。

私から鍵を受け取り、そのまま部屋へと一緒に入る。一度クシャッと私の頭に手を置いた透は、そのままお茶を入れてくれた。



「……私、やっぱり甘かった」

「……」

「この世界の事全然分かってなかった」

「……。別に分からなくて良い」

「え…?」

「知らない方が良いこともある。それがこの世界の事だ」

「……」

「美希、お前には元の世界の方が合ってることがこれで分かっただろ」

「…うん。……ごめん」

「へ?何で謝るの?」

「私のせいで、色々迷惑かけたから」

「……」



私が馬鹿だったばっかりに。甘ちゃんだったばっかりに。死のうとしてこの世界に来てしまったばっかりに…。

せっかく止まっていた涙が、また溢れてきた。



「美希、言っとくけど…事実を受け止めるのと自分を責めるのは違う。確かにお前は弱い。オレ達が付いていなかったら、1日と生きられないだろう」

「…っ…」

「でも、だからって自分が弱いことを責める必要はない。この世界でも美希より弱い奴なんて沢山居る。だからこそオレ達が居るんだ。一般人から忍まで色んな人が住んでる、村を守るためにね」

「……」

「安心しなよ。今此処に居る間は、お前はこの村の住人だ。オレが命に代えても守ってみせるよ」

「…!」



な?と首を傾げた透。そっと伸ばされた手が、私の頬を包んだ。

何て大きくて温かい手なんだろう。自分の手を重ねてみたら、その大きさがよりはっきりと分かった。

この手が自分を守ってくれるのか…。そう思ったら、安心した。



「落ち着いた…かな?」

「うん…、ありがと」

「どういたしまして」

「もう暫くの間、宜しく」

「ん、りょーかい」



頬から離れた手が、頭の上へと移動する。ポンポンと2、3回軽く叩いた後、透が口を開いた。



「美希ってさ」

「ん?」

「そうやってたら、女の子だね」

「……。





……あ゙ぁッ??!!」

「わ、いつもの凄い顔に戻った」

「どーいう意味だよ、それ!」



いつものようにヘラヘラ笑う顔に戻った透に、平手打ちをお見舞い。

でも、漸く笑えた瞬間だった。





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