「――裏切られてその上逆ギレされてさ。腹が立って悲しくなって…、死んでやろうと思った」
実際に頭から川に飛び込んだ。
そしたらこの世界に来ていた…。
別に此方の世界に残ろうが私は構わないということも喋った。
私の話を黙って風見透は聞いていた。
全てを話し終えた後、残ったお茶を飲み干し風見透が口を開く。
「それで美希はどうするつもり?此方に残るの?」
「それは…。でも、向こうの世界に戻る理由もないし…。それに私は死んだことになってる」
「……くだらないね」
「な…!」
「甘いにも程がある。裏切られたから自殺した?そんなんだからその程度の男しか捕まらないんだよ。第一親はどうなる?兄弟は?友人は?美希にもちゃんと居た筈だ。それを捨ててまで残る理由が分からない。例え望みが薄くても最後まで血眼になって探すのが親だろ。それにお前は死んじゃいない。ご両親の気持ちも考えないで勝手に死んだことにするな」
「ア、アンタは…し、死にたいほど辛いと思った事があんの?人に裏切られる気持ちがどれだけ辛いか…!」
「毎日嫌というほど経験してる」
「…!」
「昨日まで肩を並べて任務をこなしてきた奴に裏切られ、殺され掛けた。一緒に修行をしてきた仲間をこの手で息を止めたこともあった。殺らなきゃ殺される。村を守るためなら、俺たちは親だって殺せるんだ」
「…そ…んな」
「お前は、甘い。住んできた世界が違うのも勿論ある。だが、たった一人の下らない奴のせいで自分の人生を棒に振るなんて、そんな馬鹿げた話はない」
何も言えなかった。
普段ヘラヘラしているコイツの「忍」としての本当の素顔を知ったら…。
私は何て小さかったのだろう。
「それに…」
「…?」
「生死を分ける任務の合間を縫って、美希を元の世界に戻すために必死になってる柚木さんや長老の事を、もっと考えて欲しかったな」
「…!」
「お茶、ごちそうさま」
「ま、よく考えてみなよ」
そう言って背中を向けた風見透を、ただ見つめることしか出来なかった。
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