ワンコと私






「きゃっ…!」

「な、美希ちゃん…?」



女を突き飛ばし、男の胸ぐらを掴む。

あんなにドキドキしていたのが嘘みたい。その声で名前を呼ばれるだけで虫酸が走る。



「気安く呼ぶんじゃねぇよ!他の奴と賭けたぁ?誰がアンタみたいな勘違い野郎に落ちんだよ!」

「ちょ、落ち着こう?美希ちゃ…」

「だから気安く呼ぶなってんだろ!」



こんな奴のために毎日ドキドキしてたのか。こんな奴のためにいつも悩んでいたのか。
こんな奴のために、昼間の人は遊ばれていたのかよ…。



「くたばれ、もう二度と店に来んじゃねぇ!」



何もかもが悔しかった。腹が立った。

振り上げた拳を下ろそうとしたら誰かがそれを止める。風見透の手だった…。



「落ち着け、美希」

「…っ…」

「!と、透さん…!」

「よっ。コイツがいきなりゴメンね?」

「い、いえ…」




邪魔すんなと言おうとした口は塞がれて、その腕の中に閉じ込められた。
精一杯暴れてみても、ビクともしない。

そのままグルっと部屋の方へ体を向けられて、半ば無理矢理連れていかれた。

まだあの男に言ってやりたいことがあったのに…!



「うーうー!」

「はいはい、暴れない暴れない。……あ、そうそう。悠太ー」

「は、はい…?」

「最近遠征部隊に配属された子だろ? お前が手出した女って。アイツ柚木さんの教え子ってこと知ってる?」

「…え」

「あとコイツ、長老のお気に入り。そんな女に手を出そうとしたんだー、なかなか勇気あるなー」

「い、いや…それは…」

「ハハ、そんな構えるなって。俺はお前の色恋沙汰に口出すほど暇じゃない。ただ、コイツには出さない方が良いよー?これ、忠告ね」



その瞬間、恐ろしく寒気がした。



「……殺すよ?お前」



この男、やっぱりそっち系の人なんじゃないか…?マジでそう思った…。






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