「なんで俺の部屋なの?」
「一樹くんに幸を運ぶため」
「いつになったら出てってくれるの?」
「君が幸せになったら」
あぁ、何だか頭が痛くなってきた。
「随分と嫌そうな顔ね。何?私の事嫌い?」
「いや、嫌いとかそう言うのじゃなくて…」
「じゃあなに?」
「俺はその、自分の部屋に自分以外の奴が居るのが嫌なんです」
自分のテリトリー内に入ってこられるのはね…。
しかも座敷わらしと言えど“女”がいるのは特に。
どう接して良いのか分からないところだ。
「ふーん、そういうこと…。なら話は早いじゃない」
「はい?」
「言ったでしょ? 君が幸せになれば私は居なくなるって。だから君は私の好意をたっぷりと受けてさっさと幸せになれば良いってことよ」
「…はぁ…」
簡単に言ってくれるね。
しかも何、そのニヤケ顔。
何か絶対に裏有りそうだよね。
というかさ、知ってた?
人を騙すにはある程度賢くなきゃダメだってこと。
「まだ他に方法があるんでしょ?」
「あ、バレた?」
「バレバレだから」
「ふふ、君なかなか良い性格してるんだね。そう、実はあと1つだけ別の方法があるんだな~」
「それ何?」
「んー…? 残念だけどそれは言えないな。第一言ったところで君と私では無理だろうし」
君と私?
というか何が無理なんだ?
ジトー、と睨んでみるも相変わらずニヤニヤ笑っていて。
流石のこの人もそこまでバカでは無いってことか。
「ハァ…」
「クスクス…、そろそろ諦めたら?」
「……ハァ。アンタ名前は?」
「妖怪に名前は無いわ。適当に呼んでくれたら良いよ」
「ん。言っとくけど、俺は今まで通り生活するから。アンタは好きにしといて」
「りょーかい」
「んじゃこれから宜しくね」
そう言って微笑んだ彼女に、俺が盛大なため息を付いたのは言うまでもない…。
はじめまして<了>
(ハァ…、ったく…)
(何か食べる?)
(………。ハンバーグ)
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