「何で付いてくんの?」
「そんな嫌そうな目すんなよな。夜は物騒だからわざわざ送ってあげるって言ってんのに」
「頼んでないし」
「素直じゃないねー」
「ウザ…」
私の斜め後ろを付いてくる風見透が堪らなくウザい。一人で帰れるって言ったのに。
何を言っても無駄だと分かったから、放って置くことにした。風見透は黙って付いてくる。
その姿をチラッと見てみると、腕を頭の後ろに組んで歩くその姿に何故かドキッとしてしまった。ブンブン、と頭を振る。
誰がこんな変態野郎を…。
「何?どうしたの?」
「べ、別に!」
「そう?顔赤いよ?」
「あ、赤くなんか…!」
「なーんて」
「…!」
「夜目が利くって言ったって色が分かる筈ないでしょ」
ケラケラ笑うコイツが、一瞬でもカッコいいと思った自分がバカだった。やっぱりコイツは最高にウザい。
漸く自分の部屋のある屋敷が見えてきて、漸く風見透ともおさらばか、とホッと息を吐いた時、重なり合う2つの影が視界に入った。
ヤバ…、もろキスシーンなんですけど…。
急いで風見透の腕を掴み、近くの木の影に隠れる。何で自分でも隠れてるのかは分からない。案の定、風見透は「なんで隠れてんの?」と呆れ顔。
「あぁ、何で人ん家の目の前でイチャイチャすんのよ。やるなら帰ってからやれよ」
「別に気にしなくて良いだろ。あんな風に自分達の世界に入ってんだから、向こうも気付かないだろ」
「……」
確かにそうだ…。
バカップルなんぞ気にせず堂々と部屋に戻れば良い。分かっているのになかなか勇気の出せない私。
風見透は壁に凭れて腕を組んでいた。
どれくらいそうしていたか。未だその場を動くことをしないバカップルに段々とイライラしてきた。さっさとどっかいってくれ。
風見透はそんな私の様子に気付いたようで、ほら行くぞと腕を掴んできた。
その直後に聞こえてきた二人の会話…。
「ねぇ、悠太。そろそろあの子と別れたら?」
「――…!」
急に足を止めた私を、風見透は不思議そうな目で振り返った。そんなことはどうでも良い。
聞き間違いじゃない。確かに「悠太」という名前を聞いた。しかも昼間の女の人とは違う声…。
「そうだなぁ、アイツ結構重いし。お前の方がよっぽど楽だ」
「あら、それ誉めてるの?」
「あぁ。最高だぜ?」
「ふふ…」
「でもよ…」と多分悠太さんである人が口を開いた。
「あの団子屋で最近働いてる奴が居るんだけどよ」
「なーに?今度はその子?」
あ、私の事だ。
「あぁ。他の奴とももう賭けを始めてるぜ?アイツが何日で落ちるか」
「――ふっざけんじゃねぇぞ…ッ!!」
気付いたら風見透の腕を払って、男に掴み掛かっていた。
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