ワンコと私






「…っ!?」

「なっ!?」





雫が笑って、その後急に雫の姿が消えそうになっていることに気付いた。

驚く俺とは対照的に、割りと落ち着いている雫。




「どうやら、時間みたいだな」

「はっ?どういうこと?」

「多分、元の世界に帰れることになったんじゃないのか?」

「そんな、急に? なんで…」

「そんなこと知るか。……やるべき事を終えたんじゃないのか?」

「やるべき事…?」





そう言っている間にも、雫の姿はどんどん薄くなってくる。

もう声も聞き取れなくなってきた。


もう触れることも出来ない…。





「…ユ…キ…」

「雫!」





まだ一緒に居たい


まだ離れたくない


俺の中で初めて生まれた願望。


頼むからまだ行くな…






「ナンテ…カオ…シテ…ンダ」

「雫…!」

「イ…ッショダ…」

「え…?」

「ソラハ…イッショダ…」





その言葉を最後に、雫の姿が完全に消えた。


誰もいない一人ぼっちの部屋。

まるで雫という存在が最初から居なかったかのように…。



突然、空虚感に襲われた。


あぁ、また俺一人だけ。

俺一人だけが取り残されている。



どうすればいい?

不安に襲われて頭を抱える。


そんな時、不意に目に入ったのはオレンジ架かった綺麗な夕焼け空。

ちょうどが雫見ているような感じがした。



あぁ、そういえば「空は一緒だ」と雫が言ってたな。

雫は無事に元の世界に帰れるたのだろうか?


いや、帰れてなくとも空は一緒なのだから、どこかで必ず雫と繋がっている。

今見ている夕焼けを、どこかで雫も見ているかもしれない。






「きれいだな…」





まるで雫に話しかけるように。


開いていた窓から吹いてくる風が、「そうだな」と雫が笑って答えているように思えた。



短かったが、俺の心をしっかりと掴んだ雫。

また会いたいと、会ってあの笑顔をもう一度見たいと切実に思う。


夕日に照らされる部屋の中、俺の初恋は涙に終わった…――



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