「-―任務完了…」




そう呟いて、自分の手を見た。



あぁ今日も、俺の手は真っ赤だ…。


この手で何人の命を奪ったのか分からない。


どれだけの血が、この手に濃く染まっているのかも分からない。



完全に麻痺した感情。


俺はまだ、人でいるんだろうか。


なんて……、そんなことを考えたってどうにもならないのに。



ぼーっと
今の俺のように、闇に染まっている空を見上げた。



どれくらいそうしていただろう。


ハッと我に返ると、血の匂いが届いてきた。




「ハァ……、行くか」




気は進まないが、気付いてしまった以上見過ごすことは出来ない。

それが死んでいようがいまいが、関係ない。


これ以上血で染まることのないようにと、そんな意味のないようなことを思いながらその場を離れた…。





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「…くっ、…離せよ!!」




そこに着くと、既に3人の仲間が居るのが確認できた。


1人が、一般人のような、けれども見たこともない変わった服装をした女を取り押さえている。



俺もゆっくりと近付き、その女を観察していた。





「どこの村の忍だ?」


「奇妙な格好をしているな…」


「一回、長老様の所へ連れていくか」





3人がそれぞれ口を開く。

俺はと言うと、何も考えずに目の前の女を見ていた。


「行くぞ」

と言う仲間の言葉を合図に、その場を離れようとしたその時。


女が急に暴れて、俺に蹴りを向けてきた。


不意を付かれて反応が遅れてしまい、顔を隠していた面を飛ばされる。


その時に、怪我でもしていたのだろうか。

彼女の血が自分の頬に飛んできた。




「…………」

「…っ……ただでやられると思うなよ…!」




顔を見られたことを対して気にすることはせず、彼女を改めてよく見ると、身体中に切傷を負っていた。

中でも一番重症なのは右足で、察するに猛獣か何かに噛まれたような痕だった。




「うっ…」

「!……毒か」

「チッ、早く連れていくぞ」




苦しそうに顔を歪めた彼女。

どうやら傷を負っただけじゃなく、毒にもやられたらしい。


さっきまでの勢いはなく、今は荒い息づかいでぐったりとした状態で運ばれる彼女に少しばかり興味を持った。


何故だか理由は分からない。


ただ、彼女に「生」が感じられたから。


俺の手に染み付いている、冷たくて黒い血なんかじゃなく、ちゃんと温かくて綺麗な赤。


彼女は怪我をした状態でも抵抗してきた。



生きようとしていた。





「暖かい…」




頬に付いた彼女の血に触れながら、そんなことを呟いた…。





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