「――そんなに尻尾振ったら千切れちゃうよー、ワンコ」




朝食を食べ終え、後片付けを終えてもハルトはまだ戻ってこなかった。

探しに行こうかとも思ったけれど、何処からか小さいボールを見つけ出したワンコ(とりあえずそう呼ぶことにした)が「遊んで!お願い!!」とあまりにも目で訴えるもんだから、結局私はワンコとボール遊びをすることになった。


ポン、と軽く転がすとボールに飛び付き、顔とだいたい同じサイズのボールを器用に加えて持ってくる。

そのボールを私の手元に落とせば、腰を上げたまま体勢を低くして「次、投げて!」と言わんばかりに尻尾振ってきた。

その姿が本当に可愛くて、思わず頬が緩んでしまう。


再び投げたボールを持ってきたワンコを抱き上げると、やはり尻尾を振りながら「ワンッ!!」と一鳴きした。




「大きくなったら、ワンコはハンサムになりそうだね」




犬にハンサムと言うのはどうかと思うが…。

でもワンコの顔だちは整っていたし、しかもオスだから、今は愛くるしい姿でも成長して体が大きくなれば、なかなかカッコ良くなるのではないかと思った。


よくよく見れば、ワンコはハルトに似てる気がする。

いや、物凄く似てる。

この目のくりくり感、毛並み、色、人懐っこいところとか!

でもそうなると、もはやハルトがワンコに似ていると言った方が良いのか。




「ハルトって動物に例えると犬だからなー。ま、ハルトがどんな姿でも私は良いんだけどね」




抱き上げたままのワンコに向かってそう笑うと、キョトンとした目をしながらも尻尾を振り続けていた。

それから暫くボール遊びをして、お昼ご飯を食べた後もワンコと一緒に遊んで、その日一日を過ごした。


寝る準備を済ませてベッドに入ろうとしたとき、ワンコが飛び付いてきたからそのまま一緒に布団に潜る。

頭を撫でてやれば気持ち良さそうに目を瞑って、ワンコは早々に夢の中へと入り込んでしまった。


スースーと寝息を立てる可愛い寝顔を見ているうちに、私も瞼が重くなってきて特に逆らうこともせずにゆっくりと目を閉じる。


あぁ、結局ハルトは帰って来なかったな…と。






ワンコと私<了>



「ん…」




…あれ?朝…?




「ハル、ト…?」

「…スー…」

「…クス」




まだ眠い目をうっすらと開けると、私に擦り寄るようにして眠るハルトの姿が。




「ワンコ…」

「…ン……」

「みたいで可愛いー」



思った通り、大きくなったワンコはなかなかカッコ良かったみたいだ。




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